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BILL CHAMPLIN - CD

LIVIN' FOR LOVE

Sony Music Japan - 発売中

1970年代を通じてロックやポップスの起源を理解し、メロディーとよく練られた歌詞を組み合わせて独特なムードを作り出す方法を真に理解した偉大なソングライターたちが次々と現れた。そんなソングライターの中の1人が、グラミー賞ノミネート13回、うち3回で受賞したビル・チャップリンである。彼の受賞の1回は、アース、ウィンド&ファイアの不朽の名作『After The Love Has Gone』でのものだった。それ以上に彼は、1980年代に再結成されたシカゴのシンガーとして知られている。近年の彼は様々なプロジェクトを手掛けており、その中でもトトのシンガー、ジョー・ウィリアムスとスウェーデンのギタリスト、ピーター・フリステッドと組んだAORトリオCWFが有名だ。その前に彼はソロアルバム「No Place Left To Fall」をリリースしており、その13年後に当たる今、最新ソロアルバム「Livin’ For Love」が届けられたのである。

 

ビルが偉大なソングライターであることは言うまでもないが、ここに収められた14曲には、AOR、ファンク、ブルース、80年代の古き良きロック・ポップ、そしてジャズのテイストを感じさせるものを含んでいるが、それらは曲のメッセージを引き出すために絶妙にプロデュースされている。もし今が1980年代だったとすれば、このアルバムの大半の曲がヒットシングルになっていただろう。日本盤に収録されたボーナストラックのうちの1曲では、また新たなテイストが感じられる。ユートピアの「Ra」時代を彷彿とさせるプログレの香りだ。このレビューを読まれると、ちょっと雑多な感じを抱かれるかもしれないが、アルバム全体で一貫しているのはビルの魅力的な声なので、誤解のなきよう。シカゴ時代よりも円熟味を増した彼は、Another Lie (タイトルから想像するイメージとは違う)における嘆きや、まだ時期尚早とはいえエレジーとしてのMy Timeなど、すべての言葉に情熱を注いでいる。

 

2曲のボーナストラックとともに日本盤には20ページの英文ブックレットとそれを上回る36ページの日本語ブックレットが付いている。これは、ビル自身が各曲を解説したものと日本独自の解説という2組のライナーノートである。また全曲の日本語対訳付きだ。ディスクはBS2CD方式でマスタリングされているので、よりサウンドが鮮明になっている。

 

シカゴという名前やAORという言葉を毛嫌いしてラジオの検索ボタンを押したり、インターネットの別のページにすぐに飛んだりする人がいるのは知っているが、このアルバムはそのイメージをはるかに超えるものだ。このアルバムは、キャリアの最初から才能を発揮し、現在では一生分の経験を積んだ男が、その思いを注ぎ込み、書いて録音した楽曲のコレクションである。ポピュラー音楽としては、あらゆる面で達人レベルと言えよう。

 

・・・同時にソニー・ジャパンはCWFのデビューアルバムも再発リリースしている。これにはオリジナルアルバム全編と当初のボーナストラック2曲に加え、新たに4曲のボーナストラックが収録され、BS2CD方式でリマスタリングされている。『Livin’ For Love』との相性も非常にいい作品なので、まだ聴いていない方はぜひ聴いてみてください。

Track List

Reason To Believe

Especially Me

Livin’ For Love

Show Me

Another Lie

Alone

Love Lives On

Losin’ Ground

A Stevie Song

Too Good For Too Long

Love Has No Heart

The Truth Has Begun

My Time

Bonus Tracks For Japan

Slave To The Medicine

A Force We Can’t Forget

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ERKONAUTS - RECORD

I WANT IT TO END 

Independent release

ジ・エルコノウツは自らをメタル・プログレ・パンクバンドと称している。これはリスナーが彼らに抱くジャンルのイメージにかなり近いものだ。しかしこれが彼らを正確に表現しているとは言えない。彼らはオリジナリティ溢れるパンクソングを生み出し、大作をモノにできるだけの腕を持つ卓越したミュージシャンの集まりだからだ。このサードアルバムでも彼らのすべての能力を見ることができるし、素晴らしいアイデアが詰まっていることが判る。

 

私がそもそも好きなのはLP盤で、このシンプルかつ愛情がこもったレコードという代物が嬉しいのだ。タイトルを記した興味をそそるジャケットデザインは、今後何年もの間、その意味がプログレファンの間で議論の的になるだろうが、スリーヴからアルバムを取り出すと、イメージにぴったりのカラーレコードが現われる。これをかけると、ご近所さんは君の家で何かが爆発したんじゃないかと思うかもしれない。それとともに、君自身も富士山から溶岩が噴き出すような感覚に陥るかもしれない。

 

A面が素晴らしい。狂喜のあまり吐くまで踊り続けるような「War Flamingoes」で幕を開けると、テンポも構成もイメージも様々なナンバーが飛び出してくる。聴き進めていくと、一体B面はどんなことになっているのだろうかという気になってくる。こんな思いをすることはレコード以外ではないことだが、B面はA面よりもいいのだ。B面最初のナンバー「Losing Is The First Step」はモーターヘッドのアルバムの優雅さを彷彿させるし、次曲「The Sun」は、2020年に私が聴いたプログレメタルのアルバムの少なくとも半数よりも優っている。しかしその後に続く「Carvaggio」がまさにモンスターなのだ!ソフトでメロウな感じで始まるのだが、徐々に陰気で不吉なエンディングへと向かっていく。あらゆるネガティヴなイメージを伴いながら。ダイナミックとしか言いようのないこのサウンドは終始一貫しており、目を見張るものがある。真の天才と巡り会った瞬間だ。「Carvaggio」は壮大過ぎて、これでアルバムが閉まったとしてもごく自然で当然のことのように思える。実際に私は終わったと思ってレコードを取り上げたくらいだ。そう思えてしまうのだが、実際はそうではない。ジ・エルコノウツはたった1曲で衝撃を与える。エネルギーが一気に迸るのだが、「始まりを忘れないで」と言っているかのようだ。どこかのフェスティバルで演奏する彼らは「Carvaggio」でレギュラーステージを終え、またアンコールでステージに戻って来るようなイメージが頭に浮かぶ。そしてまたA面から聴きたくなってくるのだ。そのとおり、私はまた最初から聴き返した。

 

凄いやつら・・・・本当に凄い!

 

 

Track List

Side A

War Flamingoes

The Future Ends With You

Five Orange Seeds

The Cult Of The Burning Star

It Could Be Over Soon

Side B

Losing Is The First Step

The Sun

Caravaggio

The Curse Of Scotland