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Sony Music International Japan

ポップミュージックがうまく人々の心を捉えた時、その勢いは抗しがたいものであり、ザ・クークスはその達人である。15年の歳月と5枚のスタジオ・アルバムの中で、彼らは一貫して1960~70年代のイギリスの偉大な音楽を反映した素晴らしい音楽を生み出し、やり過ぎたり、図に乗ったりすることなく、1990年代のブリットポップに十分なエッジを与えている。彼らはいい人たちでもある。このポップスターたちを家に連れて帰って、お父さんやお母さんに会わせても、ティーポットにおしっこをかけられる心配はない。

 

どんな決まり文句を選んでもいい。「方向性の変更」、「音楽の境界を押し広げる」など。しかし、単純な事実として、彼らはサウンドを変えたのだ。これは、1980年代のイギリスのある時代のシンセサイザー、クラシックなサウンドのシンセサイザーとドラムビートをベースにしたアルバムである。デュラン・デュラン、OMD(オーケストラ・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク)、ウルトラヴォックスが君臨していた時代に、このアルバムは『Rio』、『Architecture & Morality』、『Lament』と容易に並べることができる。歴史的名盤に聞こえるのは楽器だけでなく、プロダクションも同じだ。1980年代のアルバムは、バンドよりもプロデューサーの方が有名になり始めた時期でもある。マーティン・ラスハント、トレバー・ホーン、ヒュー・パジャムは有名人で、彼らの手掛けたレコードに収録されているアイデンティティ溢れるサウンドを開発した。サウンドが変われば当然プロデューサーも変わるわけで、バンドはベルリン在住のドイツ人ソングライター兼プロデューサー、トビアス・クーンを起用し、アルバムのかなりの部分をベルリンでレコーディングしていル。それならボウイ・ベルリン時代の影響があっても不思議はないわけだ。クーンはリサーチを重ね、楽曲にアナログ感を与えている。このアルバムは、おそらくCDと同じようにレコードでも楽しめると思う。

 

日本盤にはボーナストラックとして「Please Don't Cry」という素晴らしい曲が収録されているので、是非CDを購入していただきたい。ディスクは8ページの英語ブックレット付きジュエルケースに収納され、20ページの日本語ブックレットが付属している。

 

ザ・クークスのこのサウンドの変化がどのようにして生まれたのかは知らないが、原因が何であれ、彼らは自分たちの芸術的創造性とファンベースを拡大できる発展性に満足できるようなアルバムを考え出し、自分たちの殻を破ったのだから問題ないだろう。ミリオンセラー、ヨット、マレットヘア、ショルダーパッドなどの時代を彷彿とさせるが、それ以上に、非常に才能あるバンドの非常に明るい未来を感じさせる作品である。

 

Track List

Connection

Cold Heart

Jesse James

Closer

Sailing On A Dream

Beautiful World

Modern Days

Oasis

25

Without A Doubt 

Please Don't Cry *

 *(日本盤ボーナストラック)

To The Faraway.jpg

DAVE BAINBRIDGE
TO THE FAR AWAYI

Open Sky

  ケルトのメロディーに適切な感覚と表現を与えるには、非常に心豊かなタイプのギタリストが必要だ。テクニックは当然必要だし、この音楽の歴史を理解することは絶対に必要なことだ。そして、その両方に加えて、才能、適性、名人技がふんだんに盛り込まれていなければならない。このタイプの男こそ、デイヴ・ベインブリッジであり、ミュージシャンの中のミュージシャンと言える男だ。ケルト系プログレバンドのイオナ(Iona)やストレートなプログレバンドのライフサインズ(Lifesigns)で知られているかもしれないが、現在はストローブスにも所属しており、それだけでも彼の実力がよく分かる。本作は彼の4枚目のソロ作品であり、率直に言って、この2週間というもの、毎日私を圧倒してくれている。音楽は他のジャンルでも同様に優れたものは多いが、ケルトの世界とそのサブカテゴリーにおいては、本作以上のものはないと言える。

 

 このアルバムについて、気まぐれで神秘的で詩的な表現を用いるのは簡単なことだが、私が表現したいのは、このアルバムが単なる往年のスコットランド・ハイランド地方へを旅してみるが如きのようなものではないということだ。まず第一に、このアルバムは、デイヴがアメリカに行って婚約者と結婚する数日前に婚約破棄となった際に、町がロックダウンされていた状態で書かれたものだということ。言葉と音楽の中に真のラブストーリーがあり、それがアルバム全体に連続性と特別な次元を与えているのだ。デイブがこれらの曲をテープ(またはデジタルメディア)に録音した時の気持ちがストレートに伝わってきて、アルバムの楽しさが増している。

 

 デイブの他の作品を見れば、メロディーと楽器の豊かなつづれ織りを期待するだろうが、彼はその期待を裏切らない。もちろん、彼のギター・ワークは何よりも際立っており、そのサスティーンによって感情を呼び起こす能力は、スティーブ・ハケットやデイヴ・ギルモアと同列に語られるべきものだ。彼は他のすべての楽器にも精通しているが、他のパートの演奏はしばしば仲間に委ねている。特にボーカルは、長年の友人でありコラボレーターでもあるサリー・ミネアとイエイン・ホーナル(10CCとELOのツアーバンドに参加)が担当している。彼らを選択したことは賢明で、曲に見事にマッチしており、メロディーに優雅さ、威厳、そして憧れの雰囲気を加えている。私が強調したいのは、彼が落ち込んでいるのではなく、明るく楽観的であるということだ。このアルバムは絶望ではなく、希望に満ちているということなのだ。

 

 サウンドに関しては、「2021年のベスト・プロデュース・アルバム」の賞が発表された時に、この『To The Far Away』がノミネートされていないとしたら、それはあるまじき行為だ。ヘッドホンでも本格的なハイファイでも、すべての音がクリアに聞こえてきて、耳を楽しませてくれる。アルバムの最初と最後を飾る爽やかな海(私はこのアルバムを「リピート」モードにしていたのだが、始まりも終わりもないような気がして夢中になっていた)から、多面的な「Ghost Light」やギターワークが光る「Fells Point」まで、特に後者のコーダでは、リビングルームで猛スピードのスコットランドダンスを踊っていることだろう。

 

ミスター・ベインブリッジ、どうぞ立ち上がってお辞儀をしてください。あなたは傑作を生み出したのです。

Track List

1. Sea Gazer
2. Girl and the Magical Sky
3. Rain and Sun
4. Clear Skies
5. Ghost Light
6. Cathedral Thinkers
7. To Gain the Ocean
8. As Night Falls
9. Infinitude (Region of the Stars)
10. To the Far Away
11. Speed Your Journey
12. Fells Point
13. Something Astonishing