GARY MOORE - CD

HOW BLUE CAN YOU GET

Sony Music Japan

10年、というのは誰の人生においても長い期間だ。それはゲイリー・ムーアのファンにとっても同じで、この10年間は彼らにとっては空虚なものだった。世界で最も偉大なギタリストがもうこの世にいないという感情がそうさせたのだ。ここにきて、ゲイリー・ムーアの新譜のリリースがアナウンスされた。未発表曲集とのことで、今年2月に1曲が先駆けリリースされるや、心が躍ったものだ。この曲は「In My Dreams」というナンバーで、「Still Got The Blues for You」のようなムーアの名作としてすぐに広まった。レコーディングもクリアで、心の琴線に触れるようなギターのラインがミックスされていた。アルバムの残りの曲もこんな感じならと、私たちはそのリリースを楽しみにしていたのだった。

 

さてここにその楽しみの結果をレポートできる。アルバムの残りの楽曲は「In My Dreams」のレベルであったばかりでなく、中にはそれを上回るものもあった。このアルバムは、ゲイリー自身が誇りに思うようなものにするために細心の注意が払われており、単なるアウトテイクの寄せ集めではない。各曲はそれぞれその位置で存在価値を示しており、収録総時間は44分を越える。なぜこうした曲がこれまで日の目を見なかったのか、不思議に思うだろう。もちろんレコーディング時にはゲイリー自身がそう判断したのだろうから、それは尊重すべきことだが、冒頭からフレディ・キングの「I'm Tore Down」の衝撃的なバージョンが飛び出してくると、このテイクのどこが気に入らなかったのかが不思議に思えてならないのだ。サウンドも完璧としか思えない!

 

アルバムのクレジットでは、全曲がクリス・タンガリーディス(「Parisenne Walkways」、「Power of the Blues」)かイアン・テイラー(「Still Got The Blues」)によるレコーディングで、サウンドに一貫性を持たせ、ゲイリー・ムーアのビンテージ感を出すことに成功している。最近では当たり前のようにいくつかのバージョンが発売されているが、より鮮明さを求めるならばBSCD2バージョンに勝るものはない。日本盤には英文ライナーノートとその和訳、そして日本独自の解説を含むブックレットが封入されている。

 

ゲイリー・ムーアのマニアにとっては、このアルバムは間違いなくコレクションに値するものだし、一般ファンにとっても嬉しいものだ。何よりも、ゲイリー・ムーアがいかに優れた人物であったか、そして彼の突然の死がロックの世界、特にブルースの世界にとっていかに大きな損失であったかを、このタイミングで思い出させてくれる。彼は亡くなってしまったが、彼の音楽は生き続けている。

Track List

I’m Tore Down

Steppin’ Out

In My Dreams

How Blue Can You Get

Looking At Your Picture

Love Can Make A Fool Of you

Done Somebody Wrong

Living With The Blues

How Blue Can You Get.jpg
LST 2Y2L Front.png

LET SEE THIN - CD

2YEARS2LATE

Progressive Gears

レット・シー・シン

2Years2Late

 

バンドのデビュー・アルバムには、いつも初めて聴く喜びがあるものだ。レビューする側とすれば、変な期待を抱かずに臨めるからである。これは、ポーランドのアート・プログレロックバンド、レット・シー・シンのアルバムで、もう最初から名盤だと言っておこう。このアルバムは、各小節やコーラス部分において古き良き時代のアレンジが施されている点において、完全なるプログレというわけではない。しかしどの曲も美しく、丁寧に作られており、演奏は崇高でさえある。

 

「Herald」がオープニングナンバーで、すぐに切れ味鋭いキーボードが刻むリズミカルなフレーズに魅了される。ベースは地を這い、ドラムが底を支える。しかしそこから突如ギターが切り込んできて、ドラムがタム類を駆け巡ると、曲は一気に飛躍する。そしてこのすべてを包み込むように、怒り、パワー、苦悩、フラストレーション、そして信じられないことだが、情熱と愛をも込めた感情を歌に託したボーカリストがいるのだ。彼の影響が明らかなことにはすぐ気づくはずだ。このアルバムの方向性がわかってきたところで2曲目に移る。この曲はキャッチーで、80年代の雰囲気があり、とろけるような美しいギターの間奏がある。バンドがさらなる影響を及ぼしていることが分かるが、それは1曲目と同じものではない。

 

聴き進めよう。3曲目はちょっと変わった出だしで、また印象を新たにする。だが各曲の素晴らしい点は、それぞれが独立してはいるものの、長過ぎない適度な長さになっていることである。制作面も優れている。ミキシングも素晴らしく、私は6曲目を聴くまでに、こんなバンドはこれまで聴いたことがないと確信した次第だ。そしてもっと彼らのことを知りたくなった。彼らはウッチ出身で(ポーランドの大都市。そう、私は調べたのだ)、そのサウンドで瞬く間にインパクトを与える。先ほどすぐにその影響下に置かれてしまうと述べたが、今まで聴いたことのない何かを彼らは持っているのだ。間違いない。これは・・・良い。

 

たとえ曲の出来やプロデュース、ミックスがイマイチだったとしても、各メンバーの演奏力に疑う余地はない。デビューアルバムというのは、なかなか判断に困ることもある。セカンドアルバム、サードアルバムに比べてじっくり時間をかけて作れるものだからだ。それゆえミュージシャンは自分のパートにじっくり取り組むことができる。しかし、ここにいるミュージシャンたちはそれぞれ、曲が必要とするものを、必要なときに正確に知る能力を持っている。ドラムのパターンは独創的で、ベースはそれと完全に呼応する。キーボードは心を揺さぶり、ギターがさらなるドラマ性を加え、バンドが一丸となっている。アルバム全体はライブ録音のような自然さがあり、バンド自体が強力だ。この強力さはコンピューターが成し得たものではない。そうした技術は最低限に抑えられているようだ。考えられるのは、レコーディング中のどこかにミスがあった場合のみに使われたくらいだろう。

 

このアルバムは、これまで長きに亘り私が聴いてきた中でも最も素晴らしいデビューアルバムである。彼らはさらに飛躍すると思う。今、世界は感染病の蔓延下にあり、人々は自分たちにとって何が本当に価値があるのかを知ろうとし始め、世界中の音楽ファンと情報交換している。今、人々が求めているものが、真のミュージシャンによって作られた真の音楽であることは明らかだ。皆さん、私は彼らを紹介できることを誇りに思う。Let See Thinです。

 

Track list

Herald

For The Future

Time

Change

Leave

To The Stars

Keep Clam

Mist