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ELVIS
FILM

Warner Bros 

キングはこれまで数々のドキュメンタリーやドラマの題材になってきたが、彼の人生を本格的に描くのは、カート・ラッセルが好演したジョン・カーペンター監督の『エルヴィス』(1979年)以来だ。信じられないことに、それはエルヴィスが亡くなってからわずか2年後のことであり、私が今この文章を書いている時から遡って約43年も前のことなのだから、彼の物語が現代の映画技術で再現されるのは、そこからずっと先のことになってしまった。さらに、エルヴィスのマネージャーであるトム・パーカー大佐の視点が加わることで、完璧な伝記映画が出来上がったのである。

 

だが本来そうなるべきだったのに、そうはならなかった。悲しいことに、バズ・ラーマン監督は、完璧なキャスティング、主要キャストとサポートキャストの素晴らしい演技、視覚的にオリジナルでダイナミックなシークエンスの編集、そして、ある特定の側面に引きずられることなく、うまく映画のペースを作った後に、エルヴィスについて決してやってはいけないこと、彼の音楽に干渉することを試みたのであった。約半分の楽曲がエルヴィスのもので、残りはその収録のための意義を無視した様々な歌手のコレクションで埋め尽くされたサウンドトラックは、今世紀にリリースされたサントラアルバムの中で最も魅力のないものの一つに違いない。エミネムやデンゼル・カリーのラップ、フリートウッド・マックのスティービー・ニックス、ジャック・ホワイト、イタリアのオルタナポップ・ロックバンドのマネスキンやスチュアート・プライスなど、それぞれのスタイルやジャンルでの素晴らしいアーティストが登場するのだが、エルヴィスの映画では意味を成していないのだ。ビジュアルがとても美しく仕上がっている映画の中で、これが一つの大きなミスになっている。

 

エルヴィスの熱烈なファンは、この映画の事実誤認を指摘したいかもしれないが、これは彼の人生のドラマ化であってドキュメンタリーではないし、他の伝記ドラマと同様に、物語を語るためにある種の詩的なライセンスが使われているのは致し方のないところだ。彼の音楽の一般的なファンであるカジュアルな視聴者にとっては、その誤差は重要ではない。この映画で語られるような出来事は起こったが、その通りになったわけではない。個人的には、1ヶ所だけ納得がいかないシーンがあるが、他がとても魅力的なので、見過ごすことができる。彼の人生の重要な瞬間を再現した衣装製作者、セットデザイナー、ドレッサー、研究者やアドバイザー、そして史上最大のロックンロールシューズを履きこなし、完璧な演技を披露したオースティン・バトラーに賞賛を贈らなければならないだろう。サウンドトラックに難があるものの、この映画は彼のためだけに観るべきだ。

 

この映画はエルヴィスの悪癖にも触れている。実際には事実であったもの、実生活の中で際立っていたわけではない。冒頭で述べたように、トム・パーカー(彼は実際には大佐ではなく、自分でそう名付けただけ)の視点から語られているので問題ないのだが、彼はそれを見ていなかったか、見て見ぬふりをしていた。そのことを意識して観ると、より楽しめると思う。

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MUSE
WILL OF THE PEOPLE

Sony Music International Japan

ミューズは現在25年もの活動に近づいており、世界中で数え切れないほどのNo.1アルバムとプラチナ賞を獲得しているバンドだ。結成初日から同じスリーピースで構成された彼らの音楽を表現する言葉として、「一貫性」という言葉が思い浮かぶ。また、彼らの音楽は、一貫して進歩し、変化し、変容し、ファンが一音一音に注目し続ける。このアルバムは9枚目のスタジオアルバムで、一聴して、より多くのプラチナ賞とNo.1をもたらすことは明らかだ。一貫性、たとえそれが絶え間ない進化であったとしても、ミューズにとっては実にうまく機能しているのだ。

 

多くの人がミューズをカテゴライズしようとして失敗しているので、古き良き時代のロックに例えれば、多少の捻りなんかを加えて、全盛期のクイーンと表現できるかもしれない。しかし、ミューズはそれを次のレベルに引き上げた。オープニングのタイトルトラックは、ここ数十年で最高のフットストンパー(足を踏み鳴らすロックナンバー)だ。こんなに大胆で、ストレートな作品は、あなたの心臓を鼓動させ、暴動を促すものだろう。さすがにこのナンバーの後に続くのは難しいもので、「Compliance」での曲調は一変し、「落ち着け」という催眠術のような癒し系になっている。この2曲のオープニングはアルバムのトーンを決定付けるもので、あからさまに政治的で、我々と彼ら、国民と権力者たちについて冷淡に、しかも絶望的に歌われる曲で最高潮に達する。しかし、そのようなものばかりではない。例えば、「Ghosts」は最近愛する人を失った人の心を引き裂くだろうし、全体としてみれば、これはミューズが長い間に作り出してきた最高の曲群なのだ。

 

決めのギタープレイ、重厚なキーボード、ド迫力のドラムが見事にブレンドされたプロダクションとミックスが、聴覚に訴えてくる。一旦スピーカーに向かって吸い込まれていき、同じ曲の間にまた席に戻され、少しハラハラしながらももっと欲しくなる。そんな感じだ。とにかく圧倒的。BSCD2マスタリングのこのアルバムは大音量で再生するように設計されており、良いハイファイで再生すると最大の効果が得られる。パッケージは、シンプルなゲートフォールドカードスリーブに、12ページの英語ブックレットと16ページの日本語ブックレットが同梱されている。

 

4年前、ミューズは『シミュレーション・セオリー』を発表したが、多くの人にとって、このアルバムはいつもの彼らからはかけ離れたものであり、前作ほどの出来栄えではなかった。彼らはそこから学び、リーグのトップにすぐに返り咲けるようなアルバムを携えて戻ってきた。そう、彼らの領域に。

Track List

Will Of The People

Compliance

Liberation

Won’t Stand Down

Ghosts (How Can I Move On)

You Make Me Feel Like It’s Halloween

Kill Or Be Killed

Verona

Euphoria

We Are Fucking Fucked