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最近では、多くのバンドメンバーが世界各地に住んでいて、インターネットでファイルを共有して新しいアルバムを作っていて、そうした状況は最早新しいことではないが、Catalyst*r(カタリスタトと発音する)が特別なのは、メンバーがこれまで一度も実際に会ったことがないということだ。実際、このバンドは2020年に元ESPの作詞家兼ボーカルのダミアン・チャイルドがプログレッシヴ・ギア・レコードに協力者を探してほしいと相談したことで誕生したものだ。ギタリストのゲイリー・ジェヴォン(ディス・ウィンター・マシーン在籍)が加わり、2人はお互いのアイデアを理解したようで、ロックダウン期間中はロンドンとリーズでやり取りをし、驚くべきことに、すぐにアルバムを作れるだけの素材が集まってきたという。さらにグレッグ・プリングル(ESP、サイモン・タウンゼントバンド)がドラム/パーカッションで参加し、その結果、ここにデビューアルバムが完成した。

 

音楽的には突出したもので、無限の可能性を秘めていると思う。70年代のELP、フロイド、クリムゾン、ジェネシスの要素が感じられ、メタルらしい地を揺るがすようなベースとギターのリフ、心に響くヴォーカル、奇妙なノイズ、プログレぽい展開と主張しながらも引くべきところをわきまえたヴォーカルで構成されている。実際、このアルバムの最も優れた部分は、すべてのトラックが適切なタイミングで変化し、流れていくことだ。飽きることなく、オープニングからラストまで全神経を集中させることができる。特に15分間の大作であるラストナンバーは、昔のプログレファンとネオプログレファンのどちらもを等しく満足させるだろう。レコーディングにはデジタル技術が使われていると考えられるが、アルバムには古さが感じられます(これは褒め言葉だ)。録音は抜群にクリアなものだが、1973年から長い間忘れられていた、あの時代のプログレの逸品を発掘したような気分になる。もちろん、そんなモードに入ったところで、そうではないことに気づかせてくれる新しい要素が現れ、現代に引き戻されるのだが。

 

敢えて言えば、ちょっとポップな要素も入っている。正確には7分50秒もある「Immortal」という素晴らしいナンバーなどは、1980年代にレコード会社の誰かがシングルの長さに編集していたら、イギリスでトップ20に入っていたに違いない。非常にシンプルなフックで、うっとりするほど親しみやすいこの曲は、プログレ志向の曲と同様にアルバムに収録されるべきものであるが、不思議なことに、伝統的にあまりおススメではない曲が置かれる定位置であるレコードの最後の方に収録されている。LP盤ではB面に収録されていただろう。とは言え、このアルバムには弱い曲がないので、曲順を決めるのはさぞ難しかっただろうと思える。

 

1時間強のこのアルバムは、最初に聴いた時にはあっという間に過ぎてしまい、すべてを理解することができなかった。2回目のリスニングでは、キャンティのボトルを開けて、このトリオが作り出した音の融合を堪能した。あなたも同じように、必要に応じて何度でも繰り返し聴かれることをお勧めする。

 

Track List

Welcome To The Show

Apollo One Three

Someone Else’s Dream

You Against The World

In The Deep End

Immortal

Goldst*R

CATALYST*R
CATALYST*R  


Progressive Gears

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1970年代、デイブ・カズンズをはじめとするザ・ストローブのメンバーは、その時代で最も優れた楽曲を作ることで業界ではよく知られていた。プログレとフォークの歌詞とポップなメロディを融合させてジャンル間をまたぐ素晴らしい能力を持った彼らをカテゴライズすることは不可能だが、私の知り合いの中には、リンディスファーンが嫌いだという人、ジェネシスが嫌いだという人、デビッド・キャシディやザ・ベイ・シティ・ローラーズが嫌いだという人がいた。しかし、私の母と父を含め、誰もがストローブスの音楽は好きだった。50年経った今、このアルバムを一度でも聴けば、静かに微笑むことができるだろう。彼らの魔法はまだそこにあるのだから。

 

1964年にバンドを結成したカズンズを筆頭に、ストローブはこれまでに33人のメンバーを輩出している。シンガーであり、メインソングライターであり、ギタリストであり、バンジョー奏者でもある彼は、素晴らしい志を持ったシンガーやソングライターたちが彼のバンドを出入りしていくのを見てきた。多くの人がバンドに何度も在籍しているので、それを例えるなら、回転ドアというよりは、「またね。いつでも戻っておいでよ。」という感じのバンドだった。このアルバムに参加している4人のうち3人は以前にストローブに在籍したことがあり、同様に4人のゲストのうち2人も在籍していた。このことで、それぞれがどのように機能するかを互いに熟知し、それぞれの道を探求する時間が与えられているミュージシャンたちが結集していることが判る。その結果、古いもの、新しいもの、互いへのリスペクト、そして素晴らしい楽曲と演奏を作ることへのこだわりが見事に融合したものとなった。

 

オープニングの「Settlement」は、低く唸るようなアコースティックサウンドとカズンズの硬質で威圧的な声で始まり、政治家や金持ち優遇政策への攻撃を展開している。見事に構築され、高揚する様は、ほとんど恐怖とさえ言えるものであり、まるで体内の血が沸騰し始めているかのように感じる。それとは対照的に、次の曲は、同じボーカリストが歌っていなければ、同じバンドの曲だとは思えないような美しさを持っている。イギリスの夏の庭に漂う霧のような歌詞は、まさに「Strange Days 」という感じなのだが、何がストレンジなのかは曖昧だ。ここに作詞家の技がある。

 

といった具合だ。各曲は、ストローブスというバンドの姿を少しずつ明らかにしている。各曲は、叙情的で音楽的な傑作であり、最近の音楽では非常に稀な、様々な感情をかき立てる崇高なキャンバスを作っている。詩のような歌詞になっているが、それは間違いではない。さらにバンドの中の詩人は1人だけではないのだ。ジョン・フォードがカズンズとコラボレーションした「Manner Of Man」やデイヴ・ランバートの「The Visit」などは、音楽と同様に歌詞も賞賛に値するものだ。LP盤の最後を飾るチャス・クロンクのインストゥルメンタルナンバーは、これ以上ない完璧さだ。

 

1970年代、ストローブスは絶頂にいた。私は敢えて言いたい。今でもそうである、と。

Track List

Settlement

Strange Times

Judgement Day

Each Manner of Man

The Visit

Flying Free

Quicksilver Days

We Are Everyone

Chorale

Champion Jack (CD only)

Better Days (CD only)

Liberty (CD only)

STRAWBS - CD
SETTLEMENT
Solid/Cherry Red