STEVE MORSE

15th May 2016

定期的に実施される世界トップクラスのギタリストの人気投票は別として、スティーヴ・モーズは、世界最高クラスのナイスガイであることは間違いない。ごく自然に、彼はインタビューでも、ファンに接するのにも、同じ物腰なのだ。彼自身、ファンが自分に会って握手したがられる人物とは思っていないようである。この男は自分のステイタスを分かっていないようで、このインタビューにおいても、自分が座るよりも先にカメラマンに席を勧めるという具合なのだ(カメラマンは女性だったが)。スティーヴはインタビューの間じゅう笑みを絶やさず、常に分かりやすい説明を添えてくれた。もし砂漠を越えて何千マイルも車で旅をするにしても、彼なら気持ちいい相棒でいてくれるはずだ。インタビューの時間制限がなかったら、いつまでも彼とそこにいただろう。

 

Q:唐突ですが、ニュー・アルバムのことを簡潔に表現していただけますか?

スティーヴ・モーズ(以下SM):ボブ・エズリンがプロデュースしてくれて、一切の心配事はなかったよ。ボブはいつもきちんと仕事を進めてくれたし、バンドにいいアドバイスもしてくれた。曲のアレンジ面でも助けてくれたし、特に曲の取捨選択に協力してくれた。例えば、僕がアイデアを出しても、バンドの連中が採用してくれるかどうかは、バンドにフィットするアイデアかどうかを判断しなきゃならないんだけど、ボブはそれを手伝ってくれたんだ。一旦これでいこうと決めると、全員が自分の持ち分にベストを尽くした。時々ボブは、「この部分にちょっと別のアイデアがあるんだけど、ちょっとソロに12弦ギターを入れてみてくれないかな。ちょっと違うアプローチにしたいんだ。」なんて言ったよ。僕らはそんな感じで進めてきて、アルバムは完成したばかりなんだ。とてもいい出来だよ!

 

Q:『Now What?!』よりも、ですか?

SM:ああ。メンバー、進め方、スピリットという点では同じだけど、僕はボブにこのアルバムでは燃えたよ、と言ったんだ。バンドにとって最高の時間が持てた。制作者全員が真剣に考えて作ったし、全員が楽しめたからね。ロックの殿堂入りのような話も出てきている。認めてもらうにちょうどいいタイミングなんだ。バンドの歴史の中で、ジョンが亡くなり、ロードクルーやトミー・ボーリンも亡くなった。ある意味、僕らは常にオーディエンスと共にあったバンドだと認識されていると思うんだ。今また僕らが注目されている。ファンもかつてなかったほど、注目して応援してくれているよ。

 

ギタープレイ

 

Q:普段はあまりプロモーションをされないあなたにお話を聞ける絶好の機会だと思っているので、いろいろ質問させていただきたいと思います。曲のタイトルというものは、ギター・ソロに影響を与えますか、それともソロは単にメロディから弾き出してくるものなのでしょうか?

SM:いい質問だね。ああ、実際には、切ない失恋の思いが詞に綴られていれば、それに影響を受けることもあるだろうね。僕はそんな曲は書かないけど(笑)。僕はもっとストレートに感情を表わすような曲を書こうと思っているんだ。音楽で絵を描こうとしているような感じだね。作詞家に近いかな。感情やフィーリングを表現することは大切なんだ。もちろん僕は演奏者の一人だし、プレイヤーとしてキャリアを積んできたから、それをプレイに表わしたいと思っている。リスナーが聴いたら、そうなっていないかもしれないけど、ソロばっかりを聴いてほしいわけじゃないからね。音楽そのものをどう感じてくれるか、だから、面白いと思うものや素晴らしいサウンドでも、何でも感じられるものを受け取ってほしいんだ。もし音楽に込められたフィーリングを感じるということなら、ソロは曲の他の部分同様、重要になってくるね。このことに関しては、ウェス・モンゴメリーの古い喩えに帰するところがあるんだ。ソロは、メロディと同じくらい美しくあるべきだ、という、ね。彼はそれを実現できたうちの一人だ。とても美しいメロディをソロで奏でたものさ。ロックとは違って、スタンダード・ナンバーを演奏する際には、得てしてリリカルにやりたがるものだけどね。元々発祥が異なるものだから。よくリズムやムードのニュアンスは弾くけど、コード展開をダイナミックに弾くことはあまりしないよね。僕はむしろこれとは逆のタイプなんだ。そっち専門になろうかな(笑)。

 

Q:新しいコードを発見したり、コード展開を逆にしたりして弾くことは多いのですか?

SM:つい最近、機械的にハーモニーを奏でながら一つの音を出す、ちょっと変わったライトハンド奏法を試したんだ。自然な音と機械的な音のミックスさ。僕は常に異質な組み合わせを考えていて、それをうまくはまるようにトライしているんだ。でもコードでそれをやってみた時に、面白いことに気づいたんだよ。

 

Q:レギュラー・チューニングですか?

SM:ああ、僕が取り組んでいるパターンの一つを、アンプを通して試そうと思っているんだ。意図的にライトハンド奏法をもっと効果的なものに変えたいんだ。アンプを通すと、実際にやるべき時とやらなくていい時がよく分かるんだよ。

 

過去

Q:最近、コリン・ハートと話したのですが、あなたによろしくと言っていました。

SM:それはどうも!彼はいい奴なんだ。一緒にやってた時は楽しかったよ。

 

Q:彼はあなたのオーディションの時のことを憶えていましてね、彼の回想では、「スティーヴはオーストラリアからメキシコまで飛んできた。私が車で彼を拾った。彼は疲れ果てていたが、そのままリハーサルに直行するしかなかった。彼のプレイは信じられないくらい素晴らしかった。彼はノーミスでプレイし切ったのである。怖しささえ憶えたものだ。」というものでした。あなたの記憶ではいかがですか?

SM:(笑)細かいことは憶えていないなぁ。憶えているのは、ちゃんとしたリハーサルじゃなくて、ジャム・セッション的なものだったということだね。機材はツアー用に楽屋に用意されていた。メンバーには初対面で、握手してからプレイを始めた。とにかく弾くしかなかった。ジョンは、僕が弾いたプレイをすぐになぞって弾いていた。何て耳のいい人だろうと思ったね。ジャズ・プレイヤーみたいだった。それからまた僕がプレイすると、今度はジョンがちょっと変化させてプレイしてきたんだ。そんな風にして掛け合いをしてから一息入れた。かなりコミュニケーションがとれたと思ったよ。それからすぐにメンバー全員が加わったんだ。このバンドはすごくいいムードだなと思ったよ。学ぶべきことはいっぱいあったけど、リラックスはできた。ジョンの耳の良さには本当に驚いたよ。僕はもう一員になったようなものだった。それからイアン・ギランがやって来て、こんな感じで始めたんだ(こぶしを固く握って顔の前に持ってきて)。僕を脅すためじゃなくて、「イエー!さあ、もっとやろうぜ!」ってことさ。あとは僕がそこに加わるだけだった。彼はボーカリストで、弾けるギタリストとやりたかったんだ!(笑)もう一度繰り返すけど、ボーカリストはギタリストが弾きまくるのに興奮するんだよ(笑)。凄いテンションになって、僕も楽しかった。何があろうとも、このバンドは素晴らしいと思ったよ。僕がソロでやっていた頃、彼らはあまりアメリカをツアーしていなかった。アメリカで彼らを観たことはなかったんだ。僕の印象では、過去の栄光を持つバンドは、キャリアが低落していく時期があり、コンサートも唯のノスタルジーになってしまいがちだった。まるでキャバレーのショーみたいにね。それが心配だったんだけど、彼らとジャムってみて、その考えを改めたよ。彼らは凄かった。僕が適任かどうかは分からなかったけど、十分務まるとは思ったね。それでこのセッションも楽しめた。僅かな時間ですべてが決まったんだ。

 

Q:22年後には、あなたが加入して大正解だったという結論が出ますよ。

SM:ある程度の人はそう思ってくれているだろうけど、正確な数字は分からないな。でもファンはリッチーが辞めたことを悔しがっているからね。僕はリッチーじゃないし。それはどうしようもないよ。

 

Q:そうですけど、今の若い子たちに言いたいんです。パープルと言えば、スティーヴ・モーズだぞ、と。彼らはリッチーがいた頃にはまだ生まれてなかったですから。

SM:人口統計学的にはそうだけどね。若い子たちはコンサートで僕を観るからね。でも往年のアルバムのメンバーを見れば、黒髪のリッチーが鋭い目つきでそこにいる。彼は凄いプレイヤーで、バンドの顔だったから、彼らもそれを認識するだろう。行動面でもファッション面でもメタルを牽引した人物として、みんながリッチーに注目するのも無理からぬことさ。ルックスもプレイも攻撃的だったからね。これまでで僕が一番、ファンからなじられたのは、僕がステージで微笑んだ時だよ(笑)。自分のキャリアがこれで終わるかと思ったよ(笑)。でも僕は気にしなかった。フェスティバルで最前列に押しかけてくる若者に見せてやるんだ。彼らが観たことのあるバンドの今の姿をね。

 

他のこと

 

Q:ビートルズのトリビュート・アルバム『Abbey Road』に参加されて、「Here Comes The Sun」をプレイされましたよね。

SM:こういうトリビュートにお声がかかるというのは嬉しいことだね。ムード・フォー・ア・デイ、ザ・クラップ、ELP、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ラッシュ、いろいろあるよ。

 

Q:ビートルズのメンバーに会ったことはありますか?

SM:うん。ロサンゼルスで僕たちの最初のアルバム『The Dixie Dregs』を制作していた時だった。ほとんどデモは完成していたので、制作プランは固まっていた。プロデューサーのスチュワート・レヴァインは顔が広くてね、クインシー・ジョーンズの娘さんが彼の恋人だったりとか。だから彼女もよく顔を出していたよ。いろいろな人が出入りしていて、僕たちにしては珍しい「Moe Down」というブルーグラス・ナンバーをやっている時にリンゴがやって来たんだ。話しかけたら、とても親しみのある人だった。彼が「君ならこういうタイプの曲をどう呼ぶ?」って訊くから、「道半ば、ですかね。」と答えたんだ。まだロックに成りきってないし、ジャズでもない。南部出身の僕にはよく分からないものだったけど、分かる人は分かるんだろうね。彼は「道半ば、ってどういうことだよ」とかぶつぶつ言いながら笑っていたよ(笑)。また、ロンドンでディープ・パープルのリハーサルをやってた時に、ロジャーとドライブしていたら、彼が「ジョージとオリビアに会いたくないかい?」って言うんだ。オーケー、って彼は言ったけど、僕にはそれが誰のことか分からなかった。彼はレンガ造りの大邸宅の前まで僕を連れて行った。「何て素敵な家なんだ!」って叫んだよ。すると彼は「ここは営倉(衛兵の詰所)だよ。」だって(笑)。

 

「もっと<ジョージとオリビア>のことを話してよ。」というと、

「おまえはジョージ・ハリスンのことを知らないのか?」って言うから、

「ジョージ・ハリスンくらい知ってるよ!!」って答えたよ。

 

彼は僕がいやにクールにしているから、分かるっていると思っていたようだけど、分かってなかったんだ。それからジョージ宅にお邪魔して、お茶をご馳走になって音楽の話を彼らとしたんだ。素晴らしい経験だったよ。僕が息子を見るのと同じようにジョージは息子さんの様子を眺めていた。とても嬉しそうに、誇らしげにね。僕は君にいろいろなことを話すけど、それを鵜吞みにはしないでほしいんだ。僕が言ったことを自分なりに理解してほしい。あれは凄い経験だったよ。

 

Q:答えられないような質問をしますよ。ジミ・ヘンドリクス、レス・ポール、ジャンゴ・ラインハルトの誰かとセッションできるとしたら、誰とやりたいですか?

SM:うわぁ!僕がもっと上手ければいいんだけどな・・・

 

Q:(困っているスティーヴの様子を見て)冗談でしょ?

SM:冗談じゃないよ。もしマクラグリンのようなアコースティック・ナンバーをやるなら、ジャンゴとやるだろうね。何か変わったプレイができそうだろ?僕はジャズ・プレイヤー並みに鍛えられているから、ソリッド・ギターをプレイするのは得意なんだ。だからレス・ポール・タイプのスタンダードをプレイするのは楽しいけど、それはジャンゴとはそう違わないものなんだよ。でもそんな偉大なプレイヤーとやれば、固まってしまうのは間違いないね(笑)。ヘンドリクスとやるのも楽しいだろうね。あの表現力のレベルに達することができるというのは、とても有り得ないね。彼はどこか他の星から来たんじゃないかな。

 

Q:今、ヘンドリクスについておっしゃいましたが、ブルーレイ作品『Flying Colors』収録の「The Storm」のソロはヘンドリクスと同じものを感じましたよ。

SM:そうかな・・・・どうもありがとう!

 

Q:あのプレイにはいつも打ちのめされます。ヘンドリクスと同じ次元のプレイだと思いますよ。

SM:ありがとう。いつも自分のプレイとは格闘しているんだよ。自分の中でね、「こうやるべきなのか?」とか「これでいいのか?」とか「とにかく感じろ!」とか、ね。いつも引き返したり、また歩を進めたりとかの繰り返しだよ。時には思いどおりにできることがある。それがあのプレイだよ。変化を求めながら、シンプルなものもやったりする。ただリラックスするためにプレイすることもある。

 

Q:多くの人はあなたとジャムるのを好むのですが、あなたはもっとその先に行ってしまっている、と思うんです。

SM:それは分からないなぁ。ミュージシャンである限り、リスナーにインスピレーションを与える何かを持っているものさ。それが起こった時は素晴らしいよね。そう言ってくれると、嬉しいね。

 

Q:あなたはパイロットみたいなものですね。パイロットは上空の未知なるものを報告しますよね。今まで説明できないような経験をしたことはありますか?

SM:ああ。

 

Q:細心の注意を払っているとか、自分らしさを維持しているとか?

SM:すべてのことには説明がつくと思っているんだ。「USOツアー」(1986年)の時、-当時はカンサスにいたんだけど-世界中の軍基地を回ったんだ。冬のアイスランドに行った時、基地のはずれに連れて行ってもらった。辺り一面、漆黒の闇でね、北極星には色がついていたんだよ。赤、青、紫に色づいて光っていたんだ。僕はそこに立ち尽くして、オーロラも見たよ。何か不思議な力が僕に押し寄せてきた。航空機から見たのも含めて、緑色の北極星は何度も見たことがあるけど、そんなことは人生でも一番驚くことだよね。パイロットと話したことがあるし、僕もパイロットなんだけど、彼らは訓練中にそれを観ていて、それを観た時には訓練がうまくいったと言うんだよ。完璧な環境だったのだろうね。一度、夜に飛行したことがあったんだ。バンドの移動はいつも夜の飛行が多いんだけど。でもたいていの場合、メンバーはみんな寝ているんだ。言わば、夢の中で自分で飛んでいるようなものだね。僕はよく夜に飛ぶんだ。僕は寝ることはできないし、緊張しているし、操縦に集中しなきゃならない。でも夜の飛行は楽しいんだよ。一度、雲と雲の間を飛んでいた。上下にある雲に挟まれていたんだ。月が少し顔を覗かしていた。自分ではよく分からないんだけど、遠くの方で核爆発があったような感じがして、いつもとは違う感じがあった。でも今こそ何かが見られる時だという気がしたんだ。前にも夜に飛行したことはあって、同じような感覚に囚われたことがあったからね。ある時は、曲芸飛行用の飛行機を操縦していて、何か光る物体も見たしね。時速320㎞で飛んでいると、物体なんて一瞬で過ぎ去ってしまう。でもその時の物体は誰かが揚げたヘリウム風船だったんだ。あれを捕まえに行こうかと思ったよ!(笑)。それはちょっと不可能だけどね!上昇してから向きを変えた。すると、ここはどこだ?って気になった(笑)。それから風船を追いかけて行った。でも深追いしなくてよかったよ。法律は犯さなかったし、僕がやったことと言えば、風船に接近して調査しただけだからね(笑)。

 

Q:モーズさん、ディープ・パープルのギタリストが曲芸飛行機に乗って、空で風船を追いかけている。何ともほのぼのした素敵なイメージですよ。今日はどうもありがとうございました。

SM:どういたしまして。ありがとう。