AC/DC - CD 

POWER UP

Sony Music International - Out Nov 13

ほとんどの人が、ブライアン・ジョンソンが諸事情によりAC/DCを抜け、クリフ・ウィリアムスが引退し、フィル・ラッドが違法行為でバンドを辞めざるを得なくなり、そして悲しいことにマルコム・ヤングが2017年に認知症で亡くなってから、2014年の『Rock Or Bust』を最後にもう彼らのアルバムなんて出ることはないと思っていたことだろう。しかし今年の9月に発表された宣伝写真では、4人のメンバーは健在で、アンガスの甥にあたるスティーヴ・ヤングがリズムギターとして加入した姿が捉えられていた。・・・密かに事態は進行していたのだ。

 

『Power Up』は彼らの代表作の一つとなるだろう。1980年代からの彼らのアルバムの中でもベストの一つだと断言する。すべての要素がここに揃っており、まさにAC/DCらしいナンバーが12曲収められている。最初のナンバーを聴き始めてすぐに、あの耳に噛み付き、脳をかき乱すあのサウンドが出てくるのだ。ここ6年の間にアンガスとマルコムが12曲以上の楽曲を書いていたことは間違いない(マルコムが亡くなる前に共作されたと思われる)。だがその中からすべてのファンに最高の喜びを与えるべくベストな曲が選ばれたのだ。ここには捨て曲も、冗長なソロも、これみよがしな演出も、オーバープロデュースも、無駄な装飾も、ない。何も足す必要がなく、何も削る必要のない、100%ピュアなロックンロールだけが詰まっているのだ。

 

昨今の傾向に従い、アルバムはいろいろなフォーマットでリリースされており、最も気の利いたものはロゴがライトアップするボックス入りCDで、充電できるUSBケーブル付きのものだ。これは1曲目の「Shot In The Dark」の冒頭パートをスピーカーで鳴らすこともできるのだ。しかしながら、私見では日本盤のブルースペックCDを購入することをおススメする。各楽器の分離が素晴らしい上に、ベースのサウンドも豊かで、中音域の迫力はまるで北海の烈風に当たったかの如く強烈な印象だ。強烈だが、それが心地良い!ボーナストラックはないが、41分間耳を刺激し続けた後には、至福の満足感に浸れることだろう。

 

個人的感想だが、マルコム・ヤングもきっとこの出来には満足していると思う。これがAC/DCの最後のアルバムになるかどうかは分からない。しかしもしそうであっても、これ以上のラストアルバム、そしてこれ以上のマルコムとバンドへのトリビュートはないだろうと思う。振り返れば2000年の初頭にAC/DCの音楽から離れてしまったものの、このアルバムで再び彼らの世界に戻ってきたことを実感している。あまり聴いてこなかったアルバムもまた聴いてみようと思っている。その結果、やはり彼らのアルバムはどれも凄かったという感想を持ったとしても、今後何年もこのアルバムは聴き続けるし、このアルバムは輝かしいキャリアを歩んできたバンドの画期的な一作となることは間違いない。

 

Track List

Realize

Rejection

Shot In The Dark

Through The Mists Of Time

Kick You When You’re Down

Witch’s Spell

Demon Fire

Wild Reputation

No Man’s Land

Systems Down

Money Shot

Code Red

HAKEN - CD

VIRUS

Sony Music International - Out now

2007年の結成以来、ヘイケンは自らの楽曲レベルとミュージシャンシップの進歩を証明するような一連のアルバムをリリースしてきた。本作は彼らの6枚目のアルバムで、現在のバンドラインナップになってからは3枚目となる。そして本作でまた彼らは新たな一歩を踏み出したと言える。まさにこれぞプログレッシヴメタルというもので、このジャンルにぴったり収まるどころか、さらにこのジャンルの枠を押し広げるかのような出来映えなのだ。前作(2018年の『Vector 』)まで、ヘイケンはプロデューサー、エンジニア、サポートミュージシャンを一切変更してこなかった。それが何だと言うのか。ここにはこれまで慣れ親しんだ環境や安定したバックグラウンドから飛び出すという彼らの進歩があったのだ。

 

地を這うベースに息をもつかせず噛みついてくるギターが、叫びまくるキーボードとメリハリの利いたドラムに支えられて奏でるどこか異国風の調べは、期待どおりの精密に織り上げられた構成美を誇る。それはまた彼ららしい様々な要素を知らしめる美しいボーカルによってさらに引き立てられる。感情表現的には、心理学的要素を多く含みながらもテクノロジー、環境、生物学、政治にも触れながら、これまでで最高の楽曲集となっている。「Messiah Complex」は16分に及ぶ大作で、いくつもの宝石の輝きに触れることになるだろう。一方で「Canary Yellow」は、ストレートで爽快なナンバー。さらに、日本盤にはボーナストラックとして「Canary Yellow」のアコースティック・バージョンが収録されている。一部の楽曲の歌詞は日本語に翻訳され、ベント・ニーのボーカリスト、コートニー・スウェインが歌っている。正直なところ、私はアルバムの実際の曲よりもこちらの方が気に入っていたりする。とにかく優しいのだ。

 

『Vector』のリリース以降、この6人は数々の賞や高い評価を受けてきたが、それは驚くには当たらない。今また彼らはこのジャンルでは最高峰の1組に挙げられている。メタルとプログレとの絶妙なバランスを保ちながら、ミュージシャンシップを極め、メンバー間で互いの実力を認め合っている。こうしたことが楽曲の中に自然に現われ、ある部分『Vector』の続編的テイストを持ちながらも、あらゆる点でさらに進化を遂げている。ジャケットのアートワークについても、歌詞に沿った不気味なイメージをうまく表現した秀逸な出来映えとなっているのだ。

 

ウィルス、というタイトルは間違いなく昨今の世界が置かれている状況をすぐに想起させるだろう。しかし乗り越えよう。このアルバムで発見できることは、そのために大きな意味を持つに違いない。もうマスクをする必要さえなくなるんだ。

Tracklist

1  Prosthetic

2  Invasion

3  Carousel

4  The Strain

5  Canary Yellow

6  Messiah Complex

  • Ivory Tower

  • A Glutton For Punishment

  • Marigold

  • The Sect

  • Ectobius Rex

7  Only Stars

8 Canary Yellow (acoustic)*

 

*Bonus track for Japan