LIVINGSTONE TAYLOR

5th September 2016

このインタビューは、私がリヴィングストン・テイラーにインタビューされる形で始まったのだった。彼は私の経歴や日本に住むようになったワケなどにとても興味を示してくれたのである。後日、私は気づいた。彼は単に私に質問していただけでなく、出会ったこの機会に私という人間を知りたかったのだ、と。質問する彼は相手の目をじっと見詰めて、気持ちを込めて訊いてくるので、こちらもきちんと答えようという気になる。威嚇されているように聞こえるかもしれないが、そうではない。インタビューは、始まるやいなやフレンドリーなムードになり、とてもリラックスした中で行なわれた。彼は何でも話ができる人であり、実際に我々は音楽以外のことも話したのだった。

 

Q:最近、アル・スチュワートにインタビューしたんですよ。

リヴィングストン・テイラー(以下LT):素晴らしいソングライターだよね!彼の作品は大好きなんだ。

 

Q:彼は私に、詞のいくつかは表向きの意味ははっきりしているが、実は裏の意味もあるんだと語ってくれました。あなたにもそのような作品はありますか?

LT:僕の曲にはダブル・ミーニングのものはほとんどないね。心に浮かんだものをすぐ詞にするからね。自分ではいい詩人だと思いたいんだよ。曲にベストフィットしているしね。アルはダブル・ミーニングにできるコツを知っているんだな。僕の「There You are Again」や「December 1903」や「Call Me Carolina」のような曲は、起承転結のあるストーリーを持っているから、いろいろな意味に取れるかもしれないね。

 

Q:曲作りの上で壁にぶち当たって悩んだことはありますか?もしあったとすれば、その解決法は何だったのですか?

LT:誰しも差し迫った事情でそれを乗り越えてきているんだよ(微笑)。僕はそのことであまり悩んだことはないね。もし僕の中に何かメッセージがあるのなら、それを表現するだけのことさ。それ以外の理由では僕は曲を書かないね。無理に書かなきゃと思って書くことはないから。表現する前にはまずここで感じるんだ(そう言って彼は目と耳を指差した)。書き始める前に必要なことなんだよ。

 

Q:ということは、どんな事でも曲のモチーフにできるのですか?それとも、何かの理由である領域やトピックを取り上げるのですか?個人的な事とか、政治的な事など・・・またはそういう事には触れないとか。

LT:ああ、極端に政治的な事には触れない。ラヴソングが好きなんだ。そこに登場する人物を描写するのがね。ライト兄弟の事を書いたのは楽しかったよ(「December 1903」)。ヘンリー・クローゼンフェルドという人を題材にして「Last Alaska Moon」という曲を書いたんだ。彼は名掘削家でね、たった一人で森の中に井戸を掘ったんだよ。人々に水を供給し、生きる糧を与えたんだ。人知れず、ね。そういう人物って好きなんだよ。最近、ウォルターという人のことを知ったんだ。ウォルターは墓石に墓碑銘を刻むことを生業としていたんだ。僅かな文字と言葉を墓石に刻んでその人の人生を象徴するんだぜ?僕はその感性に惚れたんだ。そんな風に、僕が好きな人物がいるんだ。そんな人物のことを曲にするのが好きなんだ。

 

Q:もし私があなたのコースで学ぶとすれば、あなたは私に何を期待しますか?

LT:面白い質問だな。僕のやり方は、生徒から何かを引き出すことじゃないんだ。その代わり、「与える」んだよ。そこから何が出てこようが、こまいが関係ない。自分のものにするために僕に授業料を払うのであって、何かが出てくるまでじっと待っているために金を払っているんじゃないからね。僕は生徒たちに・・・達してもらいたいんだ・・・・神の域にね!それを望まなくても構わないよ!僕の下を去って、好きなことをすればいい。他でも成功できる道はある。人生で一つの職に就き、それを磨き上げていくんだ。納得しながら、くどくど説明しなくてもいいレベルでやっていけるように、僕はそこを見ているんだ。僕が興味あるわけじゃないんだよ。僕のクラスの生徒はみんな、ただ一つの理由でそこにいるんだ。神の域に達することを目指して、ね。そうなってほしいね!僕のことを手本としているんだから、何を盗んだって、盗まなくたって構わないよ。

 

Q:あなたが『Physics For Future Presidents(邦題:今この世界を生きているあなたのためのサイエンス)』を読んでいると聞いて、興味を持ったのですが。

LT:そうなんだ、リッチ・ミューラーだよ!気に入っているんだ。

 

Q:私も買ったのですが、まだ読み始めていなくて・・・

LT:それはダメだな!もう帰ってくれ!(笑)きっと気に入るよ!リッチと僕とは長年の友だちなんだ。彼は燃焼炭化水素や地球温暖化、原子力について一家言ある人でね。彼は「ザ・シーラ・クラブ(全米最大の環境保全団体)」のメンバーでもあったんだけど、辞任したんだ。原子力に対する姿勢が食い違っているということでね。僕と同様、彼も水を沸騰させるのに炭素を燃やすということは最悪だと思っている。原子力はまだ安全で、エネルギー問題の解決には有効だと思っているんだ。

 

Q:2011年にここ日本では大地震が起こり、福島の原発が甚大な損害を受けたんです。それを機に世界中で原子力に対する否定的な見解が広まりました。

LT:うん、大きな問題の一つだね。リッチの本がいい入門書になるよ。1レム*の放射能がどんなものかということが解かるよ。放射能の致死被ばく量はどれくらいか知ってる?身体の細胞が再生不可能になるのは200レム以上なんだよ。さて、では癌を発症させるには何レムだろうか?意外に少なくて400レム以上なんだ。でも癌のことを心配するには及ばないよ。既にみんな放射線障害にかかっているんだからね!これから戻って癌のことを話してみてごらん。癌は放射線を浴びた福島の人たちとも関連している。彼らは3レム、5レム、10レム、あるいは100レムくらいの放射線を浴びている。でも癌患者に放射線を浴びさせて殺してしまうレベルと言えば、彼らの毛がすべて抜け落ちるくらいなんだよ!放射線が甲状腺に集中しないようにヨウ素を処方するんだ。これはどんな動物にも適用できる常套手段なんだ。福島のことに話を戻そうか。もし放射線障害で死んでいないとすれば、増殖する細胞に放射線が当たってしまい、統計的に癌の発生率を上げたということなんだ。癌の発生率は通常でも20%だと言われていて、福島の人たちの場合はそれが20.02%にアップした。もちろん、広島や長崎や福島に居続ければ、放射線ゆえに癌になる確率は高くなる。心理的なものも影響しているかどうかを論じるのは難しいけどね。原子力企業は本当に酷いことをした。酷いどころじゃ済ませられないよ。もっと全貌を明らかにしないといけないね。歯医者に行って、100分の1レムのX線を当てられてレントゲンをとるだろう?飛行機に乗ってロサンゼルスに行く時に空中で浴びる放射線量って知ってるかい?でもこの話、このインタビューの本道から逸れてるよね。

 

Q:いえ、全然構いませんよ。続けましょう。

LT:このことが同時に面白い政治問題も引き起こすんだよ。僕はいつも困惑するんだけど、アメリカには「ヨッカ・マウンテン」という核廃棄物保管所があってね。誰かが言っていたんだけど、向こう1万年も僕らはそれは危険だと言い続けなきゃならないのか?って。

 

Q:何ですって?!

LT:僕が怖れていたことが起こると思うよ。三人の男がその付近を歩く。彼らの足元には玉虫色のネバネバした液体状の土が湧き上がっている。そのうちの一人が誤ってそれを口に入れてしまう。そしてその場で息絶える。残りの二人はそこから逃げ出し、「ここから離れろ」と叫ぶ。狂気の沙汰だよ。自分たちでこの星を破壊しているということを認識して、環境を守り、監視していかねばならない。こういうことはあまり聞いて楽しいことじゃないけど、全人類を滅ぼすものは核以外には有り得ないんだよ。これではいけない!と意識して、入口で踏みとどまることはできる。全面戦争にも成りかねない著しいレベルの技術と産業化が求められ、この星を滅ぼすほどの核の産業化が行なわれる。ある程度害されていることに気づいたら、なるべく早くそれを止めることだ。この星は美しく、人類はそこに生きている。冷静にね!僕らは「空が堕ちて来る」なんて思いをさせられ過ぎてる。このことでどこの政府も慌てているんだ!アメリカ政府だけじゃないよ。イギリス政府もそうだし、日本政府もそうだ。彼らはことさら僕らが酷く危険な状況にいると分からせようとしているんだ。

 

Q:すべての政治は嘘だらけですよね。

LT:そうだね。

 

Q:イギリスのEU脱退とか。アメリカの最近のキャンペーンとか。

LT:そう!イギリスのEU脱退問題だ!それでどうなる?僕の以前の義母が感謝祭の七面鳥のことを話していたんだ。貿易取引をしていない層にはEU脱退は支持されている。七面鳥をテーブルに乗せる。でも人が動いた拍子に七面鳥は床に落ちて滑っていく。「大丈夫。七面鳥を皿に戻して台所に持って行きなさい。代わりの七面鳥を持って来て。」でいいんだ。でも代わりの七面鳥はないときた。君は皿に七面鳥を戻して台所に持って行くが、あたかも代わりの七面鳥であるかのようにそのままその七面鳥を持ってくる。みんなは喜んでそれを感謝祭に食べる、というわけさ。僕たちはTPPのように、長い間良識ある人たちと交渉をして貿易をしてきたんだ。イギリスがEUに加入していたのは、それ相当の理由があったからなんだ。イギリスのやろうとしていることは、台所に行って代わりの七面鳥を持ってくることなんだ。僕は政府が善良な市民を不安がらせていることを嘆いているんだ。止めてくれ!って。僕の授業の話に戻ると、生徒には緊張することについて話しているんだ。ステージに上がると、「アガル」ということを話す。僕は彼らを見て言うんだ。「ここに居たいというのは君たちの望みなんだろ?誰に頼まれたわけでもない。君がやりたいことなんだ。もしそこにいるのに堪えられないというのなら、こう言おう。もう止めておけ!とね。よくもそんなことができたものだね?ステージに上がって恐れおののくなんて自己中心的な行動がよくできたものだ。こう言ってもだめな場合は、酒でも飲んでこい。」ってね。

 

Q:テイラーさん、啓発に繋がるようなお話をどうもありがとうございました。

LT:こちらこそありがとう。リッチ・ミューラーの作品は気に入ると思うよ。

 

Q:きっとそうでしょうね。じっくり腰を据えてあなたと彼の会話を想像して羨みながら読むことにします。

LT:ああ、しょっちゅう会話しているよ!

 

Q:ありがとうございました。

LT:どういたしまして。楽しかったよ。会えてよかったよ、グレン。

 

*・・・放射能の測定単位