DIZZY MIZZ LIZZY

ALTER ECHO

Sony Music Japan - 20th March

内容が記された郵便物の封筒を見た時、私は目を見開いた。あの素晴らしかった最新作『Forward In Reverse』から4年。遂にデイジー・ミス・リジーの4作目のアルバムを手にしたのだ。やらねばならない仕事の手を止め、すぐにCDをプレーヤーに放り込んだ。ボリュームを最大限にして。既に私は確信していた。期待を裏切らない作品であることを。最初からそう断言できたことが嬉しかった。しかし実際には単にそうとは言えず、私の期待や予想をはるかに超えるものだったのである。

 

オープニングナンバーは苦悶するかのようにスローなテンポだが、構成が美しく次曲にスムーズに繋がっていく。アルバムは

まるであなたの部屋の前をゾウの群れが行進していくようなイメージだ。ドラムは跳ね、ベースは共鳴して揺れまくる。ギターは病みつきになるようなリフを畳み掛ける。それがこのバンドの個性である。言うまでもなく、ボーカルラインはで表現力豊かで美しくメロディアスだ。全曲ともパワーハウストリオの隙間を埋めるようにキーボードが配されている。これがDMLのアイデンティティとも言うべきもので、ティム・クリステンセンが再びプロデュースを担当している。もはや彼は同じ釜の飯を食う仲間と言っていいだろう。

 

生き残りを懸けて彼らはある部分変化しなければならなかった。このアルバムにおけるソングライティングとアレンジに成長が窺える。この成長というのは、ロックにおける詞のセンスにも言えることで、フォークにおいてもそうだろう。本作は現代メタルがブレンドされたプログレッシヴロックと言えるもので、彼らはここまで独自の世界を構築してきている。特筆すべきは5章から成る「Amelia」に顕著だ。我々のような年配ロックファンにとっては、アナログで言うところのLPのB面を占めるというのがしっくりくるだろう。アナログレコードに言及したが、それはこのアルバムのプロモーション盤の解説にLPリリースを前提に制作されたとあったからである。それを知り、私はさらにこのアルバムが気に入った。それは別として、ティムはちょっとしたトリックを仕込んでいる。オープニングのコードがB面の最後と同じになっていて、ループのように繋がっているという具合なのだ。粋だな。

 

2016年のラウドパークでの彼らの姿を鮮明に記憶している人も多いだろう。あの時の彼らのパワーは忘れがたい。圧倒的なパフォーマンスだったゆえに、すぐに彼らは翌年の出演も依頼された。あんな凄いステージはラウドパークの歴史の中でもなかったほどだ。彼らのステージに触れた日本のファンは、4つの理由でこのアルバムをより楽しめるだろう。まず、世界中で日本が最初にリリースされる国だということ。2つ目は、日本盤にボーナストラックが収録されること。3つ目は、かなり大規模なエリアで近日ライブが観られること(詳細は下記を参照)。最後には、サウンドが非常にクリアなBS2方式のCDであること、である。

 

さて、ここまで書いてきて、許されるならまたこのアルバムを聴きに行きたいんだけど、いいかな?

 

Track List

The Ricochet

In The Blood

Boy Doom

The Middle

California Rain

Amelia – Pt 1: Nothing They Do They Do For You

Amelia – Pt 2: The Path Of Least Existence
Amelia – Pt 3: Lights Out

Amelia – Pt 4: All Saints Are Sinners

Amelia – Pt 5: Alter Echo

Bonus Track for Japan

Madness

BLINDED BY THE LIGHT

SOUNDTRACKI

SONY MUSIC JAPAN Out now

親しみのある歌の数々が登場する映画というものは、いつ観ても楽しいものだ。『アメリカン・グラフィティ』は、『ザットル・ビー・ザ・デイ』同様、たくさんの馴染みのある音楽が登場する、その好例である。最新の『Blinded By The Light』もまた観て楽しい映画だ。挿入曲の数々が見事にシーンで機能している。だがこの映画のサントラCDで私は何か物足りない思いをしたのだが、それは収録された音楽が原因ではなかった。眺めて楽しむ映画のイメージカットが少な過ぎるのだ。

 

1987年のマーガレット・サッチャー首相時代のイギリス-憂鬱な思い出がある-の冒頭シーンはペット・ショップ・ボーイズとア-ハの音楽で幕を開ける。これがその時代のつまらなさと望みのなさを象徴している。その後、ルートンに居住するパキスタン移民の活力となるのがブルース・スプリングスティーンの音楽である。この映画は実話に基づいており、当時の移民の多くは、自分たちを受け入れたくはないこの国で生きる術を見つけるのに苦労していた。特に若者は家族に反抗し、古い伝統と新しい自由の気風の狭間で苦悩していた。話が進むに連れ、いくつもの困難な状況の中で人生に立ち向かう主人公が登場する。ここでは、彼の時代の音楽として80年代の親しみのある音楽に彩られる。しかしこうした各曲の同居がCDの流れを混乱させてしまっているのだ。独白がそこかしこに挿入されているのだが、スプリングスティーンの楽曲集にしたいのか、オリジナルのサントラを目指したのか、80年代の音楽集にしたいのか、これといったテーマが感じられるわけではない。使われている音楽のすべては、この主人公の人生を表現するものなのだが、それはその経験をしていない観る側には伝わってこない。『アメリカン・グラフィティ』や『ザットル・ビー・ザ・デイ』は多くの人々の青春時代のサントラに成り得ているのに対し、このサントラは一人の人物のサントラでしかない。聴く者とは繋がりはなく、その世代を象徴するものではないのだ。

 

とは言っても、ここに収められた音楽はもちろん素晴らしく、聴くに値するスプリングスティーンの未発表トラックが3曲収められている。映画には41曲が登場するが、本サントラにはそのうちの24曲が収録されている。その大部分はボスの曲だが、前述したようにスプリングスティーン、80年代のシンセ・ポップス、パキスタンの伝統音楽、そして独白が入り混じっているという状態である。

 

Track List

1. Ode To Javed/Javed’s Poem (Dialogue)

2. It’s A Sin (Pet Shop Boys)

3. The Sun Always Shines On TV (A-Ha)

4. The Boss Of Us All (Dialogue)

5. Dancing In The Dark (Bruce Springsteen)

6. You Should Be Listening To Our Music (Dialogue)

7. I Never Knew Music Could Be Like This (Dialogue)

8. The River* (Bruce Springsteen & The E-Street Band)

9. Number One Paki Film (Dialogue)

10. Badlands (Bruce Springsteen)

11. Cover Me (Bruce Springsteen)

12. Thunder Road (Bruce Springsteen)

13. Get Out Of My Way Fascist Pigs (Amer Chanda-Patel)

14. Do It For Me (Dialogue)

15. Prove It All Night (Bruce Springsteen)

16. Hungry Heart (Bruce Springsteen)

17. You, Me…And Bruce (Dialogue)

18. Because The Night (Patti Smith)

19. Maar Chadapa (Heera)

20. The Promised Land* (Bruce Springsteen)

21. Blinded By The Light (Bruce Springsteen)

22. Born To Run (Bruce Springsteen)

23. I Will Stand By You* (Bruce Springsteen)

24. For You My Love A. R. Rahman

 

*未発表のレコーディング