JOE SATRIANI - CD

SHAPESHIFTING

04/01/2020

インストゥルメンタル・アルバムを何枚もリリースしてきたミュージシャンにとって、長きに亘ってこの分野に興味を持ち続けるためには、その楽器の熟達者でなければならない。ジョー・サトリアーニは疑いなく熟達者の一人であり、『Shapeshifting』は1986年に世界を色めき立たせたデビューアルバム『Not Of This Earth』と同じくらい優れている。17作目となる本作は、ずっと秀作をリリースし続ける彼の最新作である。

 

ジョー・サトリアーニに求められるものはすべてここに揃っている。多様な音楽性、オリジナリティ、楽しめる要素、おっと思わせる瞬間、そしてもちろん崇高なばかりのギタープレイもある。今回は、ドラマーのケニー・アロノフ(ジョン・フォガティバンド)、ベースのクリス・チェニー(ジェーンズ・アディクション)、キーボードのエリック・コデュというコアなバンドによる制作である。ミックスとプロデュースは、フー・ファイターズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズを手掛けたジム・スコットに委ねられた。輝かしいキャリアを持ったスタッフとのコラボというわけだ。ジョーはこの心強い味方を得て、まったく退屈とは無縁の、楽しいアルバムを作り得たのである。

 

通常、アルバムをレビューする際、私は1曲目から聴いていくのだが、今回はそそられるタイトルから跳ばし聴きしていった。最も期待した4曲目が一番のおススメで、7曲目は彼の40年前の

バンド、スクエアーズ時代に戻ったかのようなサウンドだった。私が最初に聴いたこの2曲が、たまたまアルバムのベストトラックではないことを願いながら、今度は最初からアルバムを聴き通していった。ありがたいことに、私の心配事は杞憂に終わった。私のステレオシステムは各曲を正確に再生してくれ、聴き劣りするような曲はなかったのである。心から喜び、満たされる瞬間がずっと続いたのだった。今まで我々が何度も経験してきたように、ジョーは今回も楽曲において気合を入れるところ、肩の力を抜くところを心得ている。ここが彼のアルバムを聴き飽きないものにしている。独りよがりではなく、彼はキャリアに裏付けられたプライドで制作しているのだ。

 

スクエアーズ時代から考えると、ジョーのキャリアは長いものだ。世界最高のギタリストの一人であり、それは彼のファンのみならず業界関係者からも認められていることだ。彼がオリジナリティを見失ったことはなく、それにより彼はこのアルバムが示しているように、今なおこの分野の頂点に君臨している。「Waiting」、「All My Friends Are Here」、「Here The Blue River」といった曲における感情表現やムード演出は、他のギタリストの追随を許さない。ある者は速弾きに走り、またある者は売れ線狙いのプレイに終始するかもしれない。しかしジョーほどすべてにおいてバランスが取れた、完成されたミュージシャンはいないだろう。

 

Track List

1. Shapeshifting

2. Big Distortion

3. All For Love

4. Ali Farka, Dick Dale, An Alien And Me

5. Teardrops

6. Perfect Dust

7. Nineteen Eighty

8. All My Friends Are Here

9. Spirits, Ghosts And Outlaws

10. Falling Stars

11. Waiting

12. Here The Blue River

13. Yesterday’s Yesterday

NICK MASON - CD + DVD

LIVE AT THE ROUNDHOUSE

Sony Music Japan - 18th April

ロジャー・ウォータースの壮大なステージやデヴィッド・ギルモアによる親しんできたピンク・フロイドの作品集の素晴らしい再現やソロステージを観てきた我々にとって、ニック・メイスンの活動は目立たないものに思えてきた。しかし2018年、彼はアルバム『狂気』以前の見過ごされてきた楽曲を演奏するためにバンドを結成した。彼のルーツを辿ると、このバンドは小さなパブで細々と演奏していたそうで、彼自身の言によれば、あの時代の「魂を捉えていた」とのこと。本作はこのバンドの最初の作品で、ライブ盤である。ロンドンの古い劇場での公演を捉えたものだ。完全なる彼らのルーツ音楽を演奏しているのではないが(ビデオを観ると、あの時代のカラー照明やストロボスコープを再現してはおらず、現代の照明システムを使用していた)、このバンドの真髄は、まさに1960年代末期のムードだった。

 

まず申し上げておきたいのは、ニック・メイスン本人のパフォーマンスである。各パートで躍動し、自信に満ちたシンバルワークを披露している。私自身、これほどのニックのプレイを聴いたことはなかった。本作の素晴らしさの一つは、ニックがいかに素晴らしいミュージシャンであったか、彼がいかにピンク・フロイドにとって重要な存在だったかに気づけることだろう。そしてこれらの古典を演奏するために召集されたこのバンドは、ニックのフロイドへの献身と同じ情熱を彼のキャリアに対して注いでいる。このプロジェクトのために有名どころのミュージシャンを呼び集めることはニックにとってたやすいことだっただろうが、彼はそうしなかった。その代わりに彼はこれらの音楽に敬意を表してくれる有能なミュージシャンを集めたのだった。本作はすべてのフロイドファンのコレクションに加えてもらう価値がある。

 

楽曲とは別に、私が本作を気に入ったのは、各楽器のステレオ配置の具合である。まるで本当に1960年代末期のようなボーカルがあなたのヘッドフォンを駆け巡ることだろう。ギターとベースのプレイも申し分ない。オルガンもあの時代の音色で吠えまくっている。ニックの選択は100%正しかったと言える。これらの曲のこれほどのライブバージョンは、ここ何十年も聴いたことがないくらい素晴らしいものだ。ほとんどの曲についてはオリジナルどおりのアレンジで演奏されており、2020年の今でも1960年代末期のあのムードが生き生きと甦る。これはレコーディングのテクニック云々以上の何かがあったからと言わざるを得ない。

 

本作を名作たらしめているのは、BSCD2仕様を採用して日本盤をマスタリングしたソニーによってもたらされたダイナミズムによるところも大だし、ポスターや日本語版ブックレットが付属していることもその要因だ。このバンドの今後の活動については、あの時代のまだ取り上げていない楽曲を演奏することに限られるだろうが、それはともかく、今は素晴らしい本作を享受したい。長い間見過ごされてきた楽曲に注目させたことは見事だった。第二弾を待っていますよ、メイスンさん!

Disc 1

  1. Intersteller Overdrive

  2. Astronomy Domain

  3. Lucifer Sam

  4. Fearless

  5. Obscured By Clouds

  6. When You’re In

  7. Remember A Day

  8. Arnold Layne

  9. Vegetable Man

  10.  If

  11.  Atom Heart Mother

  12.  If (reprise)

  13.  The Nile Song

Disc 2

  1. Green Is The Colour

  2. Let There Be More Light

  3. Childhood’s End

  4. Set The Controls For The Heart Of The Sun

  5. See Emily Play

  6. Bike

  7. One Of These Days

  8. A Saucerful Of Secrets

  9. Point Me AT The Sky

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