PET SHOP BOYS - CD 

HOTSPOT

Sony Music International - Out now

ペット・ショップ・ボーイズは、1980年代から見事に生き残ってきたバンドの一つだ。1986年にデビューして以来、彼らは敢えてトレンドに囚われず、流行に左右されず、ミュージック・シーンの変化にも動じないような素晴らしい作品をずっと発表してきた。同時代のバンドが、レコード会社に望まれるままの方向に流れていく中、ペット・ショップ・ボーイズは自分たちがこだわるサウンドと楽曲について決して躊躇せず、妥協することがなかった。だからここに彼らの14枚目に当たるアルバム『Hotspot』が届けられても、何ら期待に反することがないのも当然のこととして受け入れられるのである。

 

このアルバムのサウンドに関しては、私は二人のメンバー、ニール・テナントとクリス・ロウとに、このアルバムをどのようにレコーディングしたのかについて訊いてみたい気持ちになった。まるで1986年にリリースされていてもおかしくないサウンドだったからだ。ニールの声は30年以上も前のままだし、クリスのプログラミングとサウンドメイキングは彼の愛機コルグかフェアライトによるものに違いなかった。1986年に立ち返ってみても奇妙なことだが、彼らは未来にはこうなるというようなサウンドを生み出していたとも言える。そして・・・今でもこのサウンドは尚も新鮮なのだ!メロディラインはキャッチーだし、このビート感は癖になる。幾層にも重なった煌びやかなサウンドプロダクションがリスニングルームいっぱいに広がり、心地良さの中に体と心が沈むことだろう。アルバムを再生した最初から、あなたのウーファースピーカーの躍動具合を見てみてほしい。

 

私は彼らがこれまでコンスタントに秀逸な作品をリリースしてきたと述べた。それは事実なのだが、だからと言ってもちろんすべての作品が同じレベルだったというわけではない。14枚のアルバムを二分したとすれば、今作は間違いなく出来の良い上位7枚の中に入る。だから、さて14枚の中から選ぶのか、と購入を躊躇する必要は少しもないのだ。この作品は聴いて心地良くなるアルバムである。こけおどしは一つもない上に、ファンが期待するダンサブルなナンバーがいくつも入っている。私が評価する点は、彼らが敢えて万人受けするナンバーばかりを収めようとしなかったことである。収録時間も80年代のアルバムでは普通だった42分前後というものだ。

 

日本盤のボーナストラックは、2曲のリミックス・バージョンが収められている。これもまた1980年代に全盛だった12インチシングル用ミックスというスタイルを踏襲している。この14分を超える追加バージョンはその長さ以上に価値があると思ってもらえるだろう。結論とすれば、この作品は彼らの2013年、2016年にリリースした前作、前々作を見事にフォローする出来映えと言えるし、このリリースに続いて世界中で実施されるであろう「グレーテストヒッツ・ツアー」も成功を約束されているようなものだ。ニールとクリスは、昔のままの姿でファンの前に現れることだろう。

 

Track List

Will-o-the-Wisp

You Are The One

Happy People

Dreamland (featuring Years & Years)

Hoping For A Miracle

I Don’t Wanna

Monkey Business

Only The Dark

Burning The Heather

Wedding In Berlin

Bonus Tracks for Japan

Dreamland (TWD vocal remix)

Monkey Business (Prins Thomas diskomiks)

H.E.R.O.

BAD BLOOD

Sony Music International - 1st April

このデンマーク出身のトリオバンドは、2019年にリリースしたデビューアルバムで強烈なインパクトを日本のリスナーに与えた。シングルカットされた「Superpowers」は全国のラジオ局でオンエアされ、この曲はウェスタン・ミュージックの4月のラジオ・オンエアチャートで4週連続ナンバーワンを記録した。日本では幸先よいスタートを切ったわけだが、そこには当然の懸念もあった。これから先、彼らは日本で支持され続けられるだけの作品を出していけるのか?本作を聴けば、その答えは「イエス」だ。

 

彼らを聴いたことのない人には、 H.E.R.O.は現代風の売れ線ポップボーカルとハード&へヴィロックサウンドが融合したバンドと言っていいだろう。言葉で説明しても、この2つは音楽的には正反対のジャンルなので、正確には伝わらないかもしれない。しかし彼らのデビューまもなくのブレイクによってファンがついたことは証明されたし、  H.E.R.O. のバランス感覚は立派に成立しているのである。2曲目の「Avalanche」がその好例だろう。これぞ現代風ポップロックのドラミングで幕を開け、ギターとベースはグリーンデイに通じるようなパンキッシュなリフを奏で疾走する。しかし穏やかな伴奏に乗せた若者のリードボーカルが始まるやいなや、突如演奏は打ち切られる。1小節目の後、すべてが・・・まるで雪崩(Avalanche)のように溢れ出してくる。そして2小節目でまたすべてが止まり、次の小節へと繋がっていく。アルバムは12曲とも3分半の楽曲で占められている。これにより、私は彼らが新しいジャンルを開拓したと言いたい。ここで言っておきたいのだが、私のパートナーがこのアルバムの全10曲から最も気に入る1曲を選んだ。それはラストナンバーだったのだが、理由はただただ美しい前半とアンチ・ノーウェア・リーグのアルバム『Perfect Crime』に似た合唱隊パートによる壮大なエンディングが素晴らしいとのことだ。

 

日本盤には7分半に及ぶ2曲のボーナストラックが収録されている。これらを安易な余白埋め的に追加されたものと思ってはいけない。事実、2曲のうちの1曲はアルバム中でも私の気に入りのナンバーとなった。ドライヴするギターリフがかっこよく、彼らにしかできない中間部の展開が素晴らしい。これだけの要素を見事1枚のアルバムに詰め込んだプロデューサー名は明示すべきだと思う*。

 

このアルバムは万人が好むものではないと思う。ポップ・ロックの熱烈なファン向けと言える。しかし1日にいろいろなジャンルの音楽を聴いて楽しんでいる私のようなリスナーにとっては、歓びを継ぎ足してくれる1枚である。

 

 

Track List

1. I Hope This Changes Everything

2. Avalanche

3. Wild

4. Bad Blood

5. Carelessly

6. Motionless

7. Losing

8. Now

9. LDS

10. Better

Bonus Tracks for Japan

11. Tell Me What You Wanna Believe

12. A Shadow

 

*・・・プロデューサーが不明なのをお許しいただきたい。インターネット情報でもプロデューサーは明かされていないのだ。