BARONESS - CD 

GOLD & GREY

Sony Music Japan - Out now

バロネスのメンバーが幸いにも誰も命を失うことがなかったあの悲惨なバス事故からもう7年が経った。しかし肉体面、精神面でのダメージが残ったことは確かだ。二人のメンバーが立て続けに脱退し、バンド継続が危ぶまれた。代わりに加入した新メンバーと共にバンドはツアーに出、2017年には4枚目となるスタジオアルバム『Purple』をリリースした。このアルバムは高い評価を得た。そして今、彼らは新しいギタリスト、ジーナ・グリーソンを迎え、5枚目となるアルバム『Gold & Grey』をリリースした。いい内容かって?もちろんだ。

 

きちんと練り込まれたメタルのアルバムを聴けるのは嬉しいことだ。このアルバムはこのメンバーによって最高の形を見せた。繊細な演奏、怒涛のベース、ドラム、ギター。不気味なピアノ、怒りを込めたボーカル、一方でソフトなオーケストラとの対比。すべてがこのアルバムに貢献し、心に響いてくる。バロネスの最高傑作と言ってよい。いろいろな要素が詰まっているため、リスナーに受け入れられるには少し時間を要すかもしれない。しかしこの楽曲の出来映えとその演奏ぶりには誰も文句はないだろう。演奏力は素晴らしいの一言。凝縮され過ぎていることもない。アレンジにはたくさんのアイデアが活かされている。曲はいたずらに引き伸ばされることなく、メロディはシンプルで印象深く、詞にマッチしている。作曲者のクレジットはたまたまバンドメンバー全員となっている。ということはジーナは加入してまもなく、立派にバンドに貢献したことを示している。だが実際には、それだけをクローズアップするのは間違いだ。このアルバムにはとても多くの要素が詰まっており、前述したように多くのアイデアが込められているのだ。そこには1曲ごとに波動を押し広げ、聴き終えるやいなやすぐまた聴き直してしまうほど魅力的な収録曲順も含まれている。

 

ベテラン・バンド、フレイミング・リップスのエンジニアであるデヴィッド・フリードマンを再びミキサーに起用した結果、ミックスは大胆でむしろロウファイの域だ。VUメーターではレッドゾーンに針が振れるだろう。しかしそれが合っていると思え、そこが重要な点でもある。このサウンドは、今ではスタンダードに挙げられるかつてのブラック・サバスのアルバム『Sabbath Bloody Sabbath』や『Vol. 4』を想起させたりもする。少し濁っているにもかかわらず鮮明なサウンドだ。聴いた時のインパクトは毎回違っている。それはすなわちミックスの妙と言えるだろう。「Seasons」をヘッドフォンで聴いてみれば判る。

 

リーダーでギタリスト兼リードボーカルのジョン・ダイアー・ベイズリーがすべてのアルバムのジャケットデザインを担当してきた。今回のデザインもこれまでのアルバムの流れに沿うものであり、一連のコレクションのようでさえある。彼のデザインもバンドの音楽同様、進化している。私は彼が近い将来、ロジャー・ディーン、デレク・リッグス、ストーム・ソーガソンらと同じレベルで語られることになると思っている。

 

メタルのマーケットでは毎月新作が続々とリリースされる。その中から飽きずに何年もの間ずっと聴き続けられる作品を選ぶことは難しい。しかし『Gold & Grey』は間違いなくその一つだと言える。

 

Track List

Front Toward Enemy

I’m Already Gone

Seasons

Sevens

Tourniquet

Anchor’s Lament

Throw Me An Anchor

I’d Do Anything

Blankets Of Ash

Emmett-Radiating Light

Cold-Blooded Angels

Crooked Mile

Broken Halo

Can Oscura

Borderlines

Assault On East Falls

Pale Sun

THE SYNTH LORD

THE SYNTH AS SOUL

Independent Release - Out now

レビューに入る前にお伝えしておきたいことがある。私の下には数多のインディーズ系CDが送られてくる。それらのレビューを求められるのだが、そのうちの99%は諸事情により丁重にお断りをしている。しかし時にはあまりに優れたものについてはレビューせざるを得ない場合もあるのだ。さて前置きはここまでとして、かつてのロック黄金期を彷彿させつつも、新生面を提示するような音楽に触れたのはいつのことだっただろう?オリジナリティに富みつつも、どこか懐かしい興奮を伝えてくれるもの。既存のジャンルなのに、新しさを感じさせるもの。そんな音楽はいつ以来のことだろうか?さあ、シンス・ロードの世界へようこそ。

 

よく考えられたバンド名で、この作品は、シンセサイザー、ドラムマシーン、サウンド・エフェクトの塊のような音楽である。他にどんな楽器が使われているのかは、ちょっと聴いただけでは分からないくらいだ(できればイヤフォンではなく、ヘッドフォンで聴いてほしい)。音の万華鏡とも表現できるもので、美しいサウンドが左右、前後にパンされて幾層にも重なって溢れ出してくるのだ。この音楽を一言で伝えようとすれば、まさにこういうサウンドとしか言いようがない。オープニングナンバーを20秒間聴いただけで、このサウンドを理解しようと、脳みそはぐちゃぐちゃになってしまうだろうし、40秒間聴いてしまうと何が何だか分からなくなってしまう。2曲目はメタルぽいギターとドラムが勢いのあるシーケンサー(本当に凄い)に乗って迫ってくる。そこから、もう何年も聴いたことがなかったような、ポップスの極致とも言える崇高なサビへと突入するのだ。詞の面でもメロディの面でも完璧、これを以って「ナンバーワンヒット」と言わねば、何を以って言うべきかというものだ。アルバムではこの曲だけが優れているわけではない。アルバム全曲が珠玉の作品で、最初から最後まで耳を奪われ続けるだろう。

 

私が一人よがりで激賞していると思うなら、1曲ずつ聴いていってみてほしい。よほど耳と感性が鈍くない限り、このアルバムを正しく評価してもらえると思う。しつこいようだが、全曲ともよく練られており、決して音を詰め込み過ぎてはいない。メロディは美しく、プロデュースも的確だ。かつてのロック黄金時代のサウンドのようでもあり、現代のテクノ時代のひねりも利いている。現代のレコーディングでは音量の変化をつけることはめったになく、大音量は歪ませ、重低音を利かすこともない。しかしこのアルバムを再生するや、その迫力には圧倒される。耳を聾するような大音量でも音は鮮明なのだ。この音を聞いた隣人でさえ気に入ったほどである。

 

私の友人はこの音楽を「シンス・ポップ・ロック」と表現し、そんなジャンルが将来確立されるのではないかと評した。ヒューマン・リーグとハワード・ジョーンズとゲイリー・ニューマンがUSSエンタープライズ号の中で演奏しているみたい?レディ・ガガがとことんいっちゃったレベル?2050年に出現したデヴィッド・ボウイのようなサウンド、かもしれない。

 

 

Track List

Sacrifice

I Am Not The One You Want

Scared

Fame And Fortune

Tonight

Consecrated

We Are Not Alone

Telephone

Paradise

The End Of Times