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ROB HALFORD - CD

メタル・クリスマス

Sony Music Japan - 発売中

10年前、ロブ・ハルフォードはアルバム『Winter Songs』をリリースした。今また彼はクリスマスのスタンダード・ナンバーと冬に因んだ楽曲をメタル風にアレンジし、自作の新曲を加えたアルバムを制作した。このアルバムのリリースが最初に告知された時、プリーストのファンは戸惑い、評論家連中はネガティヴな批評を書こうと手ぐすねをひいていた。しかしロブは素晴らしい作品を届け、我々を驚かせたのだった。2008年にリリースしたプリーストとしての最後の冒険作『Nostradamus』よりも出来が良いとする評論もあったほどだ。『Celestial』は、『Winter Songs』で終えたはずの夢を追い続けたものである。『Nostradamus』が徐々に反響を呼んでその面目を保ち、2018年の傑作『Firepower』で歴史に名を刻むことになったプリーストだが、このロブのソロアルバムは見下したり、無視したりすべきものではない。実際のところ、この作品は今年リリースされたクリスマス・アルバムの中ではベストと言え、オリジナリティという点でも優れている。

 

アルバムには4曲の新曲が収録されており、そのうちの2曲は冒頭に収められている。タイトルナンバーは、クリスマスらしい効果音に彩られた美しいストリング・カルテットの序曲から突如プリーストらしいギターリフに突入していく(どうしてこんな魅力的なリフを考案し続けられるのだろう?)。アルバムは、クリスマスシーズンを演出するメタルナンバーやバラードで彩られている。どのナンバーも吟味され、丁寧にアレンジされているが、原曲の魅力は失われていない。「Deck The Halls」が二度のギターソロとテンポチェンジを含んだプリーストらしいナンバーである一方、「God Rest Ye Merry Gentlemen」でロブは、ミュージカル俳優のようなヴォーカルスタイルで歌うことを楽しんでいる。あと2曲の新曲のうち、「Morning Star」 はファンが一緒に歌えるようなシンプルなアレンジとコード進行を持った曲で、明らかにシングル向きのナンバーだ。ちょっと安っぽい感じで70年代のイギリスのヒットチャート向きのようなナンバーだが、アルバムにまた違った趣を与えている。好き嫌いは分かれるところだろうが。

 

イギリスのお祝いムード溢れるシーズンに家族と一緒に聴いてもらえるようなアルバムにするため、ロブは身内のミュージシャンに助力を求めた。彼の弟ナイジェルをドラムに、姉のスーをジングルベルに、そしてスーの息子アレックス(スーはプリーストのベーシスト、イアン・ヒルと結婚している)をベースに据えた。バンドの残りのメンバーは、友人のロバート・ジョーンズ、ジョン・ブレイキーの二人がギター、フィル・リデンがパーカッション、プリーストでの盟友マイク・エグゼターがキーボードを担当した。マイクはプロデュースとミキシングも手掛けている。

 

『Celestial』(邦題:『メタル・クリスマス』)はオリジナルの古典ナンバーとはかけ離れているが、毎年身も凍るように寒い冬が訪れ、日暮れ時にそこかしこにクリスマスのイルミネーションが灯る頃、必ず聴きたくなるような期間限定のアルバムである。さあ、プレーヤーにこのCDをセットして、ホットワインをなみなみと注いだグラス片手に聴き込んでみてほしい。

 

 

Track List

Celestial*
Donner and Blitzen*
God Rest Ye Merry Gentlemen
Away in a Manger
Morning Star*
Deck the Halls

Joy to the World
O Little Town of Bethlehem
Hark! The Herald Angels Sing
The First Noel
Good King Wenceslas
Protected By the Light*

 

*New song

RICK WAKEMAN - CD

クリスマス・ポートレイト 

Sony Music Japan - 27th N0v

クリスマス・アルバムは聴くタイミングが限定されるものだ。なぜなら、気温35度、湿度75%のような環境で聴くにはそぐわないし、通常クリスマス・アルバムというものは1シーズン聴かれればそれで忘れ去られるものである。翌年にはまた別のクリスマス・アルバムがリリースされるだろうからだ。しかしながら、リックの最新作は向こう何年もの間、毎年聴き続けられるものではないかと私は大胆に予想する。

 

この鍵盤の魔術師は、ピアノという楽器に一目惚れした時の情熱を隠そうともせず、指から自然に流れ出るかのようなイメージで古典音楽を素晴らしいアレンジで聴かせてくれる。リックは過去にもピアノアルバムを何枚かリリースしており、遡れば1986年の『Country Airs』はピアノ音楽の新時代を切り拓いた先駆けの一つであった。彼はクリスマス・アルバムもレコーディングしているが(2000年の『Christmas Variations』。これを持っていたかどうかを失念してしまっているが)、これにはシンセサイザーが導入されており、熱心なファンには受け入れられなかった部分もあった。今作は、古典音楽本来のメロディを大切にしながら、リックはこれまでになかったほど巧みに奏でていることにより、我々は七面鳥を焼く準備をしながらグリューワインをすすって一日中何度も繰り返し聴ける作品集となっている。これを聴きながらの作業に失敗はない。BGMとしてのみならず、聴き込む価値のある作品でもある。

 

収録曲の半数はメドレーで、残りの半数は独立している。ご期待どおり、メドレーにおける2曲(時には3曲)の繋がりはスムーズだ。単独曲でも、あらゆる音階を駆使して奏でるリックの卓越した能力を知らしめるものだ。収録曲は万人が馴染みのある古典だが、いくつかには違和感なくリックが付け加えた現代的な趣向が施されている。彼はもっと有名なヒット曲(例えばアーヴィング・ベルリンの「White Christmas」とか)は収録したくなかったようだ。その判断は正解だったと言える。収録していても、それらはこの作品群にあってはそぐわなかっただろう。プロダクションはもちろん余計な装飾を排しているが、リックの指の微妙なニュアンスはきちんと捉えている。日本盤についてはBSCD2方式が採用されており、スタンウェイのモデルDグランドピアノから流れ出すすべての音が正しく再現されている。また日本盤にはボーナストラックも収録されており、手頃な価格のこの作品は、きっとあなたと音楽好きなあなたの親戚の方々の素敵なクリスマスプレゼントになることだろう。

 

 

Track list

The First Noel

In The Bleak Midwinter

Deck The Halls/Away In A Manger

The Holy & The Ivy/Mary’s Boy Child

Silent Night

God Rest Ye Merry Gentlemen/Angels From The Realms Of Glory

O Come All Ye Faithful/Hark! The Herald Angels Sing/See, Amid The Winter’s Snow

O Little Town Of Bethlehem

I Saw Three Ships/When A Child Is Born

O Holy Night

Coventry Carol/O Come O Come Emmanuel

A Winter’s Tale

We Three Kings

Sussex Carol/It Came Upon The Midnight Clear

Joy To The World (Bonus Track for Japan)